起業家インタビュー / 株式会社ロイヤルナース 代表取締役・看護師 高 有未

「ひと訪問 ひと笑い」を届ける——制度に縛られない訪問看護のかたち

 2026.5.22

J-Create+に入居する起業家へのインタビュー企画。


今回ご登場いただくのは、自費訪問看護サービス「ロイヤルナース」を立ち上げた高 有未さんです。


看護師として急性期病院、クリニック、訪問看護と多様な現場を経験してきた高さん。制度の枠にとらわれない新しい看護のかたちを実現するため、2026年4月に自費訪問看護サービス「ロイヤルナース」を起業されました。


「必要な方に、必要なケアを、必要なタイミングで届けたい」「働く人が大切にされる組織をつくりたい」という想いから生まれたロイヤルナース。その原点から現在、そしてこれからの展望まで、お話をうかがいました。


看護師としての歩みと、訪問看護への原点


「看護師歴は今年で13年目になります。キャリアのスタートは、大阪の急性期病院でした。脳神経外科・HCU病棟に3年間勤務したのち、ICUへ異動し、急性期医療の現場で経験を積みました」


医療の最前線で経験を重ねてきた高さんは、その後、結婚を機に関東へ移ります。形成外科・内科クリニックでの勤務を経て、訪問看護の道へ。その大きなきっかけとなったのが、お祖母様の在宅ケアでした。


入院していたお祖母様が最期の時を迎えるにあたり、ご家族の希望で自宅へ戻ることに。高さんも関東から大阪の実家へ帰省し、介護をサポートしました。その際に利用したのが、訪問看護サービスでした。


「当時、看護師ではあったものの、在宅看護について深く知っていたわけではありませんでした。ただ、祖母が病院から自宅に戻った時、慣れ親しんだ家の音や匂い、家族の声に触れた途端、表情が柔らかくなったんです。その姿を目の当たりにして、自宅で過ごすことの力を実感しました」


慣れない介護に懸命に向き合う家族。そして、その家族の想いや頑張りまでも受け止め、支えてくれる訪問看護師の姿。お祖母様本人へのケアだけでなく、家族の気持ちにまで寄り添う看護の奥深さに、高さんは大きな衝撃を受けたといいます。


「自宅に看護師さんが来て、こんなにも温かく支えてくれる環境があるのだと実感しました。その時、私自身も看護師として、『心に寄り添う看護を患者様に届けたい』と強く思ったんです」


病院の中だけでなく、その人の暮らしの中に入り、本人と家族の時間に寄り添う看護。

その価値を肌で感じた経験が、高さんにとって、訪問看護へ進む原点となりました。


インタビューを受ける様子


介護保険制度で届かない訪問看護の現場、起業という決断


お祖母様の在宅ケアをきっかけに、高さんは訪問看護サービスを提供する企業へ転職しました。約4年間、訪問看護師としてさまざまなご家庭を訪問し、一人ひとりの暮らしや想いに寄り添う看護・介護を追求してきました。


さらに、訪問看護ステーションの新規立ち上げにも携わり、主任として看護師の教育にも関わるなど、現場と組織づくりの両面で経験を重ねていきます。


その中で高さんが強く感じるようになったのが、介護・医療保険制度の中だけでは応えきれないニーズの存在でした。


「訪問看護の現場では、制度の外での看護を求める声をたくさん聞いてきました。たとえば、旅行や外出、通院に付き添ってほしい。夜が不安だから一晩中そばにいてほしい。そうしたご希望をいただく場面がとても多かったんです」


しかし、介護・医療保険制度に基づく訪問看護では、提供できるサービスの内容や時間に制限があります。本当は必要とされているケアであっても、制度の枠を超えることはできず、断らざるを得ない場面も少なくありませんでした。


「患者様やご家族が必要としているのに、制度上応えることができない。その現実に向き合う中で、『制度外であっても、必要とされているなら応えたい』『もっとその方に合った、より良いサービスを届けたい』という思いが強くなっていきました」


一方で、高さんが現場で感じていた課題は、患者様へのサービスだけではありませんでした。さまざまな看護師と共に働く中で、看護師自身が疲弊している現実を目にすることも多かったといいます。


「看護師は、患者様やご家族のために一生懸命向き合う仕事です。でも、その看護師自身が疲れ切ってしまっている場面も少なくありませんでした。だからこそ、もっと看護師が働きやすい組織をつくりたいと思うようになりました」


制度の枠にとらわれず、自分たちが本当に必要だと思う看護を届けられる環境。そして、看護師一人ひとりが自分の仕事に誇りを持ち、満足して働ける環境。高さんは、そうした組織づくりにも強い思いを抱くようになります。


「看護師が大切にされ、満足して働くことができれば、その先にいる患者様にも、より良いサービスを提供できると思っています。看護師の価値をもっと高めたい。働く人が大切にされる組織をつくりたい。そういう思いも、会社を立ち上げる大きな理由の一つでした」


必要とされている看護がある。けれど、今の仕組みの中では届けきれない。

そして、看護を届ける側である看護師も、もっと自分らしく、誇りを持って働ける環境が必要だ。


その二つの思いが、高さんの中で次第に「自分でやるしかない」という決意へと変わっていきました。


そして2026年4月、高さんは自費訪問看護サービスを提供する「ロイヤルナース」を立ち上げました。


制度の枠にとらわれず、必要な時に、必要な人へ、必要な看護を届けること。

そして、看護師自身も大切にされる場所をつくること。


ロイヤルナースには、その両方を実現したいという高さんの想いが込められています。


スタッフ集合写真


自費訪問看護だからこそ実現できる価値


ロイヤルナースが提供するのは、ご利用者様やご家族の希望に合わせて柔軟に利用できる自費訪問看護です。


自費訪問看護とは、医療保険や介護保険の枠にとらわれず、必要な時に、必要な内容を選んで利用できる看護サービスのこと。夜間の付き添いや長時間の見守り、外出・旅行の同行、病院受診の付き添いなど、保険制度内では対応が難しい支援にも柔軟に対応できることが特徴です。


しかし、「自費訪問看護」という言葉は、まだ広く知られているとは言えません。


「私自身、もともとは保険の訪問看護で働いていましたが、自費で訪問するケースは本当にごく一部でした。『自費って何ですか?』と聞かれることも多く、まだまだ認知が広がっていないと感じています」


一方で、「自費の訪問看護サービス」に大きな可能性を感じています。


「これから高齢化がさらに進んでいく中で、介護保険制度だけでは対応しきれない部分も増えていくと思います。だからこそ、自費という選択肢をもっと多くの方に知っていただくことが大切だと考えています」


ロイヤルナースのサービスは、大きく分けると「在宅療養を支える看護」「ご家族の負担を軽くする支援」「その人らしい暮らしや希望を叶えるサポート」の三つに分けられます。


具体的には、医療ケアが必要な方の在宅療養を支える24時間ケアをはじめ、夜間介護、退院支援・退院後ケア、終末期・看取り期のケア、病院付き添い・受診同行、外出や旅行の付き添い、ご家族の介護負担を軽減するレスパイトケアなどです。


たとえば、医療依存度が高くても「できる限り自宅で過ごしたい」と望まれる方には、主治医や他職種と連携しながら、医療機器の管理や症状観察を行い、安心して在宅療養を続けられる体制を整えます。退院直後の不安が大きい時期や、終末期・看取り期においても、ご本人とご家族の想いに寄り添いながら、その人らしい時間を支えていきます。


また、夜間の体調変化や吸引などが心配な場合には、看護師が夜間に訪問し、定期的な観察や医療ケアを行います。ご家族が安心して休める時間をつくることも、在宅療養を長く続けるためには大切な支援の一つです。


病院受診への同行も、ニーズの高いサービスです。お一人での通院が難しい方や、医師の説明を正しく理解できるか不安な方に看護師が付き添い、診察内容や今後の方針をご家族へ共有します。離れて暮らすご家族にとっても、安心につながる支援です。


さらに、体調面の不安から外出や旅行を諦めていた方に対しては、看護師が同行し、移動中の体調管理や必要な医療ケアを行います。「本当は行きたかった場所へ行きたい」という願いを、安心して叶えられるよう支えることも、自費訪問看護ならではの役割です。


「受診同行や夜間の付き添い、外出や旅行のサポートなど、介護保険制度の中では難しいことでも、自費だからこそ柔軟に対応できる場面があります。医療ケアが必要だからといって、暮らしの希望を諦めるのではなく、その方らしい時間を過ごせるように支えていきたいです」


医療と介護、生活のあいだにある、お困りごとに寄り添うこと。

そして、ご本人とご家族が望む時間を、できる限り安心して過ごせるように支えること。


それこそが、自費訪問看護であり、ロイヤルナースが提供する価値です。


訪問看護の様子


「ロイヤルナース」に込めた覚悟と、看護の本質


社名に掲げた「ロイヤルナース」という言葉には、高さんの明確な意思と覚悟が込められています。


「自費で料金をいただく以上、それに見合うサービスを必ず提供しなければならないと思っています。だからこそ、選んでくださる方にふさわしい名前にしたいと考えました。

同時に、会社の看板を背負う看護師自身も、誇りを持てる名前にしたいという思いがありました。より高い価値を提供するという意味も込めて、『ロイヤルナース』という言葉を選びました」


ロイヤルナースが目指すのは、サービスを自由に選べることだけではありません。高さんが大切にしているのは、一つひとつの看護に、相手を深く理解しようとする姿勢と、心からの敬意を込めることです。


「自費である以上、ご希望に合わせて柔軟にサービスを選んでいただけることは大切です。ただ、それだけではなく、私たちは接遇やホスピタリティの質にもこだわりたいと思っています。ご家庭ごとに歩んでこられた人生があり、価値観があり、生活のリズムがあります。だからこそ、一律のマニュアル通りでは、本当に必要な看護は届けられないと思うんです」


高さんが看護師に求めるのは、目の前のケアをただこなすことではなく、その人自身を知ろうとする姿勢です。どのような人生を歩み、何を大切にしてきたのか。今、何に不安を感じ、どのような時間を望んでいるのか。そうした背景までくみ取ることで、初めてその方に合った看護が見えてくるといいます。


「言葉がけ一つ、手をさする一つの動作にも、その方を思う気持ちは表れると思っています。患者様が言葉にされていない不安や希望にも気づき、必要な時にそっと寄り添える存在でありたい。看護師が関わることで、少しでも安心できたり、その方らしい表情を取り戻せたりする。そういう関わりを大切にしていきたいです」


一人ひとりの人生に敬意を払い、その人にとって本当に必要な看護を見極め、丁寧に届けること。



その積み重ねこそが、「ロイヤルナース」という名に込められた看護の在り方です。


「ひと訪問 ひと笑い」に込めた想い


「訪問するたびに、少しでも笑顔になってもらえる時間を届けたいと思っています」


そう語る高さんが大切にしている言葉が、「ひと訪問 ひと笑い」です。


「在宅での看護では、その方の生活の背景や、歩んでこられた人生に敬意を払いながら、必要な支援を届けたいと考えています。病院では医療上の安全や治療が優先される場面が多い一方で、在宅看護はその方の生活の場に私たちが伺うものです。だからこそ、ご本人の想いや生活のリズムを大切にしながら、必要なケアを一緒に考えていくことが大切だと思っています。お一人で過ごす時間が長い方も多いからこそ、訪問した時に少しでも笑顔になっていただける時間をつくりたい。その想いを込めて、『ひと訪問 ひと笑い』を大切にしています」


その姿勢の原点には、これまでの訪問看護の現場での経験があります。


「今でも心に残っているのは、最期の時間を自宅で過ごすために退院された、ある患者様との関わりです」


その方は、もともと在宅で支援していた患者様でしたが、病状の悪化により入院。その後、ご家族の「最後は自宅で過ごさせてあげたい」という希望で、退院されることになりました。


入院中、高さんはご家族へ定期的に電話で連絡を取り、不安に寄り添い続けていました。退院後、意識がはっきりしない中で高さんが声をかけると、その方はつらい状況の中、懸命にこう伝えてくれたといいます。


「家族が、高さんから連絡をもらうと安心できると言っていましたよ。いつもありがとう」


その後、言葉を交わすことはできなくなりましたが、その言葉は今も高さんの心に深く残っています。


「自宅で過ごしたいというご本人やご家族の願いに寄り添えたこと。そして、自分の関わりがご家族の安心につながっていたことを知り、在宅看護の意味を改めて感じました」


ご本人の願いと、ご家族の想い。その両方を支えることが、在宅看護の大切な役割なのだと実感した経験でした。


一回一回の訪問が、その方の人生の一部になる。

その時間を少しでもあたたかいものにしたい。

そんな想いが、「ひと訪問 ひと笑い」という言葉に込められています。


訪問看護の様子


看護師が誇りを持てる場所を、仲間とともに育てていく


ロイヤルナース設立の根底には、「必要な看護を届けること」に加え、「看護師が自分の仕事に誇りを持ち、いきいきと看護ができる環境をつくりたい」という想いがあると、高さんは語ります。


「ロイヤルナースのことを知っていただき、想いに共感してくださる方と一緒に働きたいという気持ちもあり、今年の4月からSNSでの発信を始めました。ありがたいことに反響があり、2週間ほどで200名以上の方にフォローしていただきました。『自費訪問看護とは何ですか?』というところから興味を持ってくださる方も多く、看護師が起業したことにも関心を寄せていただいていると感じています」


発信を通じて、ロイヤルナースに関心を寄せる看護師から「一緒に働きたい」という声も届いています。ただ看護師求人で人を増やすのではなく、まずはお互いを知り、想いを共有しながら関係性を築いていくことを大切にしたいと、高さんは考えています。


「今後はInstagramでの発信も始めていく予定です。ロイヤルナースに興味を持ってくださる看護師が増えたらうれしいです」


想いを共有できる仲間とともに組織を育てること。

そして、看護師自身が満足し、誇りを持って働ける環境をつくること。

その積み重ねが、看護師にとっての新しい働き方をかたちにしていきます。


人との縁に支えられながら、一歩ずつ


明確な理念を持って起業を決意し、順調に歩みを進めてきたように見える高さん。しかしその裏側には、看護師としての経験だけでは乗り越えられない、起業ならではの学びと挑戦がありました。


「これまで看護師として医療の現場に身を置いてきたため、ビジネスの世界については初めて知ることばかりでした。名刺交換やメールでのやり取り、各種書類の準備や手続きなど、一つひとつ学びながら進めています」


会社を立ち上げる過程では、法務や手続き、経営に関わる判断など、これまで触れてこなかった領域にも向き合う必要がありました。司法書士や弁護士など、専門家の力も借りながら進めてきた日々は、高さんにとって大きな学びになっているといいます。


「今も不慣れなことは多いですが、目の前の課題に一つひとつ向き合いながら進んでいます。起業しなければ出会えなかった方々に支えていただいていることも、本当にありがたい経験です」


看護師として培ってきた誠実さを土台に、未知の領域にも学びながら向き合っていく。その姿勢が、ロイヤルナースの歩みを支えています。


事業を進める中で、高さんが特に大切にしているのが、人とのご縁です。


起業後は、訪問看護に関するシンポジウムでのご縁をきっかけに、自費訪問看護の先輩経営者をご紹介いただき、事業について学ばせていただく機会にも恵まれました。また、SNSを通じて経験豊富な看護師から応募があるなど、一つひとつの出会いが新たなつながりへと広がっています。


「起業してから、人とのご縁に支えられていることを強く感じています。出会った方々から学ばせていただき、新しいつながりをいただく中で、自分一人ではできないことも少しずつ形になってきました」


現在は経営者として、看護師が安心して力を発揮できる環境を整える立場でもあります。


「働いてくださる看護師さんが安心して関われるように、私自身が積極的に動き、必要としてくださる方にサービスを届けていきたいです。その積み重ねが、患者様やご家族の安心にもつながると思っています」


人とのご縁を大切にしながら、働く看護師にとっても、患者様やご家族にとっても安心できるサービスを育てていく。

高さんは、そうした想いでロイヤルナースの歩みを一歩ずつ進めています。


J-Create+に入居して


高さんがJ-Create+への入居を決めた背景には、創業支援への期待がありました。


「城南信用金庫の方々が伴走してくださる点に、大きな魅力を感じました。起業を通じて、社会人としても一から学んでいる私にとって、事業に寄り添っていただける環境があることは、とても心強いです」


入居後もインキュベーションマネージャー様の支援を受けながら、事業の進め方を学び、そのありがたさを実感しています。


「インキュベーションマネージャー様には本当にお世話になっています。少しでも恩返ししていきたいです」


現在はオフィスとして活用し、看護師との面談などにも利用しています。J-Create+は、ロイヤルナースの事業基盤を整えていく上で、大切な拠点となっています。


株式会社ロイヤルナース 代表取締役 高 有未


まとめ


「制度にとらわれず、本当に必要とされる看護を届けたい」

「働く人が大切にされる組織をつくりたい」


その想いから生まれたロイヤルナースは、医療と生活のあいだにある困りごとに寄り添い、新たな看護のかたちをつくろうとしています。


未経験の分野にも一つひとつ向き合い、人との出会いやご縁を力に変えながら、歩みを進める高さん。その姿からは、これからの看護の可能性が感じられます。


「ひと訪問 ひと笑い」


その言葉に込められているのは、看護を通じて安心だけでなく、心が少しほぐれる時間を届けたいという想いです。


本当に必要とされる看護を、必要としている人のもとへ。

高さんの挑戦は、ご利用者様とご家族、そして看護師にも、あたたかな笑顔を広げていくはずです。


インタビュイー紹介


大阪府出身の看護師。急性期病院、クリニック、訪問看護を経て、2026年に自費訪問看護サービス「ロイヤルナース」を創業。制度にとらわれないケアの実現と、看護師が誇りを持てる働き方の両立を目指している。


 


株式会社ロイヤルナース

代表取締役・看護師 高 有未 株式会社ロイヤルナースロゴ


株式会社ロイヤルナース

株式会社ロイヤルナース

2026年設立の自費訪問看護サービス。「ひと訪問 ひと笑い」を大切に、東京・神奈川で柔軟な看護を提供。

https://royalnurse.co.jp

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代表取締役・看護師 高 有未