起業家インタビュー / 株式会社スリーウェイ 代表取締役社長 林 英史 / 取締役 加藤 ゆかり

感性だけでも、数字だけでもない、データ×クリエイティブで実現する「三方よし」

 2026.3.19

J-Create+に入居する起業家の方々をご紹介するインタビュー企画。

今回ご登場いただくのは、株式会社スリーウェイ 代表取締役社長の林 英史さんと、取締役の加藤 ゆかりさんです。

デジタルマーケティングを軸に、ブランディングから施策実行まで伴走支援を行う同社。現在は「マーケティング」「女性のキャリア支援」「DX・AI導入」という三本柱で事業を展開しています。

根底にあるのは「いいものを持っている人や企業が、正しく評価され、喜ばれる状況をつくりたい」という一貫した価値観。そんな同社の起業の経緯から現在の事業、そして創業の地である蒲田への想いについて、お話をうかがいました。


美大から大手機器メーカーへ。「売上につながるデザイン」を磨いた原点


林さんのキャリアは、一般的なマーケター像とは少し異なります。


スタートは美術大学。油絵を学び、表現すること、感覚で捉えることを大切にしてきました。その後、就職で映像制作や映画制作の現場を経験し、「作るだけではなく、どう届けるか」という視点を磨いていきます。


そして2005年、大手機器メーカーへ転職し、デザイン部門に配属されます。


「当時、社内には『マーケティング』という概念が根付いておらず、デザイン部門は『おしゃれなものを作ればいい』となりがちでした。自分自身も油絵を学んだくらいなので、美術的に優れたものが好きな人間です。しかし、企業のインハウスデザイン部門はそれだけではいけない。私は「いいものを作っても効果が出なければ企業において意味がない」との信念を持っていたので、当初はデザイン部門メンバーと衝突することもありました。しかし、数字にこだわり、定量的に結果を提示していくことで、クリエイティブが結果にどのように貢献したのかという実感が共有できるようになり、次第に横のつながりが出来上がっていく感覚がありました。


例えば、バナーを1つ制作するのでも、データアナリストや研究部門を巻き込んで分析し、ABテストもして、戦略を立てる。小さくても大きくてもPDCAを回すことが大切です。


代表取締役社長 林 英史


もともとブランドや製品への信頼はあったので、そこにマーケティングの手法やクリエイティブを活用することで、商談率や売上が大きく伸びました。せっかく良いものを作っているのに『やり方』の部分でうまくいっていない、それがマーケティングやクリエイティブの力で変化していく、それがとても面白いなと感じました。」


 


こうした取り組みの中で、同機器メーカー在籍時には「グッドデザイン賞 ベスト100」に選出された実績もあります。


当時、明確なマーケティング部門がなかった社内で得た「かっこいいだけではなく、売上につながるデザインが重要」という価値観は、現在の事業の基盤となっています。


「いいものを、ちゃんと届く形に」起業を決意した原点


以前から起業について考えていたという林さん。


「実際に『人に届ける』『いろいろなステークホルダーが喜んでくれる』ことに快感を感じていて、いつかは起業したいという思いもずっと持っていました。同時に、『いいものを持っているのに、伝え方が分からなくて埋もれている。そういう人や会社が本当に多いな』とも感じていました。


そして、これまでの経験で学んだことをもっと広く展開しようと決意し、2024年の11月に株式会社スリーウェイを設立しました。社名は、マーケティングにおける『三方よし(提供者・顧客・社会を含めた関係者全員が、皆、幸せになる)』が由来です。」


代表取締役社長 林 英史 / 取締役 加藤 ゆかり


三本柱の事業は、すべて「成果にどうつながるか」を基準に


スリーウェイの事業は大きく3つの柱で構成されています。


「1つ目は、ブランディングから戦略設計、施策実行までを伴走するマーケティング支援。2つ目は、女性の起業・転職・副業を支えるサービス「hajimari」。3つ目が、業務効率化や分析高度化を目的としたDX・AI導入支援です。


デジタルかアナログかは、正直どうでもいいんです。大事なのは、何を目指して、どう届けるか、ということ。『成果にどうつながるか』を基準に設計・運用する点が当社の特徴です。」


初歩から伴走する、マーケティング・ブランディング支援


スリーウェイの事業の軸にあるのが、マーケティング・ブランディング支援です。林さんはこの仕事を、戦略だけを語るものでも、施策を代行するだけのものでもないと話します。


「マーケティングは、とても難しいものだと思われがちですが、実は『小さなステップの積み重ね』と『チームづくり』だと考えています。


現在取り組んでいる支援先のひとつに、地方の地場産業があります。製品そのものの質は非常に高く、全国ブランドとして確立できるポテンシャルを持っています。しかし、届け方や設計が整理されておらず、本来の価値が十分に伝わりきっていない状況でした。


そこでまず取り組んだのは、データの保存場所や運用ルールを決めること、そしてコミュニケーション環境を整えることでした。『そこからですか?』と思われることもありますが、土台が整っていなければ、次の一歩には進めません。


そのうえで、関係者の皆さんから丁寧にお話をうかがい、ホームページや情報発信、EC、そして『誰に、何を、どう届けたいのか』を整理していきました。一つひとつ確認しながら、その場しのぎではなく、持続可能で継続的に成長していける仕組みへと組み立てていきます。


いきなり『ブランドをつくりましょう』とは言いません。まずは『どうありたいのか』『今、何が足りていないのか』を一緒に見える化する。その積み重ねこそが、私の考える伴走型のマーケティングです。」


棚卸しから始める、女性のキャリア支援


三本柱の2つ目が、女性のキャリア支援です。この事業は、取締役・加藤さんと、社員・木下さん、二人の女性の存在が大きな軸になっています。


サービス立ち上げのきっかけは、木下さんのふとした一言だったといいます。


「女性が、キャリアをあきらめなくていい社会があればいいのに」


木下さん自身、ご家族の転勤をきっかけに、それまで積み上げてきたキャリアが一度途切れた経験を持つ一人です。現在は大阪在住で、子育てをしながらフルリモートで勤務。さらに副業としてブーケデザイナーとしても活動しています。ライフステージの変化と働き方の選択、その両方を実体験として知っている存在です。


一方、スリーウェイはマーケティング会社として、集客やWeb制作、SNS運用などを強みとしてきました。さらに加藤さんはその立ち上げに携わり、事業全体の設計や支援体制づくりを担ってきた人物です。さらに、AI活用や業務設計にも深く関わっており、「難しい技術を、誰でも使える形に落とし込む」役割を担っています。


こうした人、それぞれの経験、培ってきたスキル、そして「キャリアをあきらめなくていい社会をつくりたい」という想いが重なり、形になったのが「hajimari」です。


「この支援で最も重視しているのが 『棚卸し』です。まずはじっくり話をうかがって、自分が何を大事にしたいか、を言葉にする。そこが整理されるだけで、気持ちがすごく楽になる方も多いんです。


相談にいらっしゃる方の中には、専業主婦の方もいれば、会社員として働きながら悩んでいる方もいます。話を聞いていくと、『今は動かない方がいいですよね』という結論になることも普通にあります。私は、それもちゃんとした選択だと思っています。何かを強制するのではなく、後押ししたり、見える化したり、気持ちを整理するところを起点にしています。


その結果、起業や転職、副業の決心がつく方も多いので、そこからは具体的な支援につなげます。例えば、AI活用支援やSNS集客、Web制作、Canvaテンプレートの作成など、実行面まで伴走します。


また、実際にお客さまのヒアリングをする中で、「ひとりで開業すると、悩んだ時に気軽に相談出来る場所がなく、とても孤独だった」という方が多いことを知り、コミュニティやチャット相談を通じ、『一人で抱え込まない環境づくり』も重視しています。あくまで主役は相談者であるご本人であり、スリーウェイは隣を走る存在です。


実際のご相談では、個人の動画編集者の方に対し、クラウドワークスの自己紹介文や写真の見直しなどを支援し、大型案件の獲得につながったという事例もあります。」


取締役 加藤 ゆかり


DX・AI導入支援、ニッチな課題ほどAIとの相性はいい


3つ目の柱が、DX・AI導入支援です。この分野で象徴的な事例が、ブーケデザイナー向けのAI活用支援でした。


「正直、最初は僕も『ブーケデザイナーって何に困っているんだろう?』と思いました。しかし、実際に話を聞いていくと、お客様との打ち合わせの議事録を取るのが大変だったり、ブーケとドレスの組み合わせイメージのためのコラージュ画像を手作業で作成しているために時間を取られてしまう、といった具体的な課題がありました。


そこで、生成AIを使うためのプロンプトやテンプレートを提供し、議事録作成やビジュアル生成、提案資料作成の負担を一気に減らすことができました。ニッチな職種ほど、『何に困っているか』がはっきりしているんですよね。だからこそ、AIとの相性がとても良いのです。汎用的な使い方じゃなくて、その人の仕事のためのAIを作ることができるんです。」


DXという言葉に対する林さんのスタンスは、終始一貫しています。


「DXって、システムを入れることじゃないと思っていて。本来やりたい仕事に、ちゃんと時間を使える状態を作ることだと考えています。そのための手段が、たまたまAIだった、という感じです。」


J-Create+に入居して


スリーウェイの拠点がある蒲田は、林さんにとって、事業と人生を考えるうえで欠かせない場所だといいます。林さんは、蒲田という街について、こう語ります。


「蒲田は、自分にとって人生の転機になった街です。ここに来てから、少しずつ自分の人生を見つめ直すようになりました。人によって、いろいろな印象を持たれる街だと思いますが、僕にとっては、とにかく元気をくれる場所なんですよね。人が多くて、にぎやかで、エネルギーがあって、気づくと前を向かせてくれる。だから、この街から事業を始めたいと思いました」


そうした想いの延長線上に、J-Create+への入居がありました。


「J-Create+さんや城南信用金庫さんが掲げている『大田区を元気にする』というビジョンには、すごく共感しています。ただ場所を借りる、という感覚ではなくて、この街で何かをやろうとしている人たちが集まる場所だな、と感じました。自分たちも、その一員として関わっていきたいと思ったんです。起業して間もない中で、J-Create+には経営の視点で相談できる人がいる、話を聞いてもらえる環境があるというのは、本当にありがたいです。事業の話だけではなくて、『経営者としてどう考えるか』というところまでサポートしてもらえる。それは、すごく心強いですね。」


一方、加藤さんにとっても、J-Create+は大きな意味を持つ拠点だと言います。


「J-Create+に入居したことで、交流会やセミナーなど、いろいろな機会をいただいています。普段の仕事だけでは出会えない方とつながれる場があるのは、本当にありがたいと感じています。こうした機会を通じて、自分自身も刺激を受けています。


私がスリーウェイで働く理由の根底には、「三方よし」という理念への共感があります。自分だけが成長するのではなくて、周りの人たちと一緒に、より良い未来を作っていきたい。その想いがあるから、ここで働いています。私自身も、まだまだ成長の途中ですが、この環境の中で学びながら、関わる人たちと一緒に前に進んでいけたらと思っています。」代表取締役社長 林 英史 / 取締役 加藤 ゆかり


結論を急がず、その人にとって納得のいく選択を尊重し、支援に向き合う姿勢から、林さんと加藤さんの誠実さと温かさが感じられました。


「いいものを持っている人や会社が、ちゃんと届いて、ちゃんと評価されて、みんなで喜べる状況をつくりたい」


アートという感覚的な世界から、企業のマーケティング、そして起業へ。林さんの言葉の一つひとつには、「伴走する支援」への強い想いがにじんでいます。


蒲田を拠点に、どのような「三方よし」を形にしていくのか。スリーウェイの取り組みは、これからも少しずつ広がっていきそうです。


インタビュイー紹介


大手機器メーカーでBtoB領域のマーケティングに携わった林英史氏と、AIエンジニアリングと業務基盤設計を担う加藤ゆかり氏。三方よしの理念を軸に、「いいものを、ちゃんと届く形に。」するための事業を展開している。


株式会社スリーウェイ


代表取締役社長 林 英史


取締役 加藤 ゆかり


 


株式会社スリーウェイ

デジタルマーケティングを中心に、ブランディングから施策実行まで幅広く支援。女性のキャリア支援「hajimari」、DX・AI導入支援など3本柱で事業を展開。

公式サイト:https://threeway.co.jp/


株式会社スリーウェイ

株式会社スリーウェイ

デジタルマーケティングを軸に、ブランディング支援や女性キャリア支援「hajimari」、DX・AI導入支援を展開。

https://threeway.co.jp/

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